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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)11078号 判決 1980年10月08日

原告 加藤正午

右訴訟代理人弁護士 倉田靖平

被告 株式会社三菱銀行

右代表者代表取締役 岡田真

右訴訟代理人弁護士 伊達利知

右訴訟復代理人弁護士 溝呂木商太郎

同 伊達昭

同 沢田三知夫

同 奥山剛

主文

一  被告は、別紙目録記載の土地について、横浜地方法務局相模原支局昭和五〇年二月一三日受付第五五五六号の根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、別紙物件目録記載の各土地(以下、本件土地という。)を所有している。

2  被告は、本件土地につき主文第一項記載の根抵当権設定登記を有している。

よって、原告は、被告に対し、所有権に基づき、被告が右根抵当権設定登記の抹消登記手続をすることを求める。

二  請求の原因に対する認否

請求原因事実は認める。

三  抗弁

1  被告は、原告との間で、昭和五〇年二月五日、本件土地につき、被担保債権の範囲を債権者被告・債務者訴外株式会社天龍商事間の銀行取引による一切の債権、手形小切手債権、極度額を一〇〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、同月一三日、右契約に基づき、請求の原因2の設定登記手続をした。

2  被告は、右訴外会社及び訴外加藤和典との間で、昭和四九年九月五日、右訴外会社所有の東京都大田区蒲田四丁目二八番地二、家屋番号二八番二、鉄骨造陸屋根五階建事務所、床面積一階ないし四階各六三・〇〇平方メートル、五階二一・七〇平方メートル及び右訴外人所有の右同所二八番二、宅地一〇三・三三平方メートルにつき、被担保債権の範囲を債権者被告・債務者右訴外会社間の銀行取引による一切の債権、手形小切手債権、極度額を二五〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、同月一七日、その設定登記手続をした。

3  右訴外会社所有の建物及び右訴外人所有の土地は、昭和五一年四月七日、代物弁済を原因として訴外須山博之に、昭和五二年七月一一日、売買を原因として訴外東日本物産株式会社に各所有権が移転され、いずれもそのころ、各所有権移転登記がされた。

4  右土地建物については、昭和五三年七月一四日、競売手続開始決定がされ、昭和五四年四月二六日、訴外家内長次郎がこれを競落して所有権を取得し、同年六月一二日その旨の登記をした。

被告は、右競売事件において、根抵当権者として、債務者株式会社天龍商事に対して有する被担保債権の全額である手形買戻請求権元金八四九万九一〇〇円及び遅延損害金四一一万三五九五円につき、競落代金より交付を受けた。

5  右代金交付により被告の訴外株式会社天龍商事に対する債権は全て消滅し、右土地建物の第三取得者で右競落によりその所有権を喪失した訴外東日本物産株式会社(昭和五三年四月一〇日商号変更により株式会社都通商となった。)は、被告の原告に対する本件土地についての根抵当権につき、民法第五〇〇条、第五〇一条第三号第四号の規定により、法律上当然に代位した。

従って、被告は、右代位権者である訴外株式会社都通商から本件根抵当権について代位による移転の付記登記を請求されれば、これに応ずべき義務を負担しているので、原告の被告に対する本件根抵当権設定登記の抹消登記手続に応ずることはできない。

四  抗弁に対する認否

抗弁1ないし4の事実は認める。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因事実及び抗弁1ないし4の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二  右争いのない事実と《証拠省略》によると、本件根抵当権の被担保債権と抗弁2の被担保債権は、その極度額を異にするが、その範囲は共通すること、また、弁論の全趣旨によると、本件根抵当権の被担保債権の元本は、抗弁4の競売手続開始決定のころ、取引の終了により確定したことが認められ、従って、抗弁4の競売手続において被告が代金交付を受けたことにより、本件根抵当権の確定した被担保債権は消滅したことが明らかである。

三  被告は、抗弁2の根抵当権の目的不動産の第三取得者である訴外株式会社都通商が被告の原告に対する本件根抵当権につき法律上代位したことを前提に本件根抵当権設定登記の抹消登記手続に応じえないと主張するが、民法第五〇一条各号の法意からして、第三取得者は物上保証人に対して債権者に代位しないと解するのが相当であるから、被告の抗弁は失当であり、他に、本件事実関係の下で、原告の請求を拒みうる法律上の理由は見出されない。

四  よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 牧野利秋)

<以下省略>

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